アトリエの日々
いつも海で会おう
書こうとして書かなかったことは
しだいにしだいに薄れていくようで
もしかしたら
より色濃く確かな存在となって
私の心、私の命をかたちづくっているのかもしれない。
もう、境目など見分けようもないのだ。
カトリのからだを空へと見送って半年が過ぎた。
“半年、 がんばった。がんばったよ、かっちゃん”
布団で目覚めたままに
そう口に出して泣いた。
カトリが病気を発症してから
毎夜カトリのからだを手でつつみ
いつか夢で見た海のはなしをした。
そうしているうちに深く眠る日もあれば
夜通し語りあう日もあった。
いつも同じ海のはなし
いつもその海で
私たちは落ち合う
カトリが亡くなる3日前
はじめて一緒に海を見た。
からだはずいぶん辛かったろうけど
あたたかい砂浜に寝そべると
気持ち良さそうに目を細めた。
これが海?
これが海
知ってるよ、初めて見るけど、知っている
この海藻、かっちゃんの色に似てるね
磯のにおい、いいにおい
かっちゃんのからだを空へと見送った日
夕暮れに、海へ行ったんだ。
かっちゃんへのお線香を立てる砂をもらいに
そしたらね、いっしょに遊んだ海藻が
まだちゃんとあったよ。
あの日かっちゃんがいた場所を、教えてくれたの。
拾ってこようか迷ったけど
そのままにした。
2016.12.17 sat
2016-12-17 | Posted in アトリエの日々 | Comments Closed