アトリエの日々
なまえのないねこ
4/21 (day 1)
なまえのないねこに会った。
外出から戻ったさとさんが「いま、猫がいた」と言う。
外で猫に会うと必ず報告してくる。私はいつも痩せてた?と訊く。
この辺は野良猫もよく肥えているし、首輪を付けた外飼いの猫も多い。
「痩せてない」いつもその答え。よかったねぇ、と笑って終わり。
ところが、さとさんが神妙な顔で「痩せてたねぇ… なんか、大変そうだった」と言う。
予期していなかった答えにしばしパニクったが、なぜか珍しくすぐに体が動いて、
次の瞬間には家にあったつぼちゃんのご飯を持って、猫の前に立っていた。
近所のアパートと倉庫の隙間にその猫はいた。
覗くと、体も動かさず一生懸命シャーシャーと威嚇する。
ちょっとそっち行っていい?と伺いながら一歩踏み出すと、体を起こして逃げる。
しまったと思ったのだけど、猫は足を引きずっていて遠くに逃げられない。
怪我もしてるのか・・・
ねぇ、ごはん持ってきたんだよ。食べない?としゃがんでごはんを見せると、
こわがってシャーシャーいいながらも我慢できずに近寄ってきた。
ごはんが鼻先につくとフゴフゴいって貪り食べる。
お皿が空になると、全然足りないんですけど!って顔をされて、
家猫ならば1日一缶という缶詰を2缶、瞬時に平らげた。よっぽどお腹空いてたんだね。
近くで見ると、背中はゴツゴツで耳と顔の皮膚炎が痛々しい。
鼻も詰まっているみたいでブシュブシュ音がする。こりゃぁ、大変そうだ。
お腹が満たされて安心したのか、差し出したお水もごぶごぶ飲んだ。
すぐそこに住んでるから、辛かったり助けてほしかったら訪ねてきてね、とこの日は別れた。
4/22(day 2)
次の日は、うちの車のある駐車場で待っていた。
近づくととりあえずシャーといった後、ニャーと鳴く。
ごはんを食べる姿を上から見るとこの細さ。
食べるのに夢中だから、おそるおそる触ってもいい?と触ってみると、気にもとめない様子。
なんだ、いいのか。よしよし。
雄だから、痩せててもやっぱり骨格が大きい。水を飲む姿はライオンのようでかっこいいね。
いいお顔。
4/23(day 3)
もう、駐車場で待っているようになった。
待ってるくせに、最初は必ずシャーという。野良猫の礼儀なのか?
触れる事がわかったので、つぼちゃんの毎日のマッサージに使っていた玄米酵母液
(玄米と塩と黒糖を発酵させて作る自家製。植物性の乳酸菌のようなもの)を持ってきた。
汚れも少しは取れるだろうし、皮膚炎にもいいはず。
私自身も肌にはこれしかつけていない。痒みや傷にも効く。
とにかく汚れているし、疥癬(ダニ)の疑いもあるので手袋2重。
顔も体も酵母液でビショビショにしてマッサージ、タオルでぬぐうとタオルが真っ黒に。
そう簡単に汚れは落ちないけど、毎日続ければ綺麗になるんじゃないかしら。
ずっと誰にも触られてなかったようだから、猫も嬉しいみたい。
グルーミングしたら、もう仲間だよね。
4/24(day 4)
昨日の酵母液マッサージで、すでにだいぶ綺麗になったように見える。
ごはんも毎日食べてるから様子がよくなったんじゃないかしら。どうだろう。見慣れただけか。
駐車場の神さまみたい。などと眺めていると、どうも尻尾が気になる。色とか、毛艶とか。
毛を割ってみると、そこは闇だった…
今はノミのピーク時期前らしく、ノミ自体は見ないんだけど、おそらく長年ノミの巣窟だったんだろう。
毛も皮膚もベタベタの真っ黒で、そういえば、尻尾をあんまり動かさない。
尻尾、腐ってるんじゃないか?と不安になって、
家から動物にも安全な液体石鹸とペットボトルにお湯を入れて持ってきて洗う。ゴシゴシ洗う。
夢中すぎて写真は撮ってないんだけど、泡が真っ黒になる。かなり手強い汚れ。
根気よくこすっていると、白い地肌が見えた!よかった、腐ってなかった!
その後、無事尻尾を動かせるようになる。
4/25(day 5)
今日もふきふき。
だいぶ気を許して、全身触れるようになった。
初めて会った日に引きずっていた左後ろ足も、触ってチェックしてみる。
全く痛がる様子もなく外傷もないようだ。
でも足先をつく事ができず、プランとさせてピョコンピョコンと歩く。結構辛そうに見える。
この日、尻尾の付け根についにノミを発見してしまった。やっぱりいるよね…
駆虫薬は使いたくなかったけど、この時期ダニも怖いし、
1番近くの動物病院に相談してレボリューションを滴下。お腹の回虫にも効くそうだ。
触るのは平気だけど、抱きかかえると怖がるから、写真を見せて相談した。
足のことも訊いてみると古傷の可能性が高いとのこと。
野良猫は骨折してもそのままだから、後遺症が残ることが多いそうだ。
外で生きるのは大変だね…
4/26,4/27 (day 6 & 7)
続く雨と、突然の冬のような寒さに堪らず家の中へ。
寒さのせいか、左目が結膜炎ぽくなっていて心配。
急に連れてこられたから、最初はこわがって、
心細そうな声でドアに向かってニャオニャオ鳴いた。
大丈夫。心配ないよとなだめて、湯たんぽの入った箱の中に入れると、
「なにこれ、あったかい」とすんなりおさまった。よしよし。
一晩目はトイレに行かず、気を揉んだけど、2日目には無事に出来た。ほっ。
ごはんもバクバク。
お水もごくごく。
4/28 (day 8)
いまここ
4月21日
つぼちゃんの百箇日に出会った猫
百 と書いて、もも と名付けました。
いろいろ問題はあると思うけど、その都度一緒に考えていこう。
少しでも幸せな方に。
なまえのあるねこ
ももさん、どうぞよろしく!