アトリエの日々
3月2日
春を連れて、隼人さんがやって来た。
カトリの誕生日に。
野良猫のカトリに、私は、名前と自分の誕生日をあげた。
だから、私の誕生日でもある、
3月2日。
演奏会のはじまりに、少しだけお話させていただいた。
カトリのいた窓辺、カトリのいた日々、一緒に隼人さんのギターを聴いたこと。
いま、ここにカトリはいないこと。
隼人さんの手から生まれる音が、この小さなアトリエの空気と時間を震わせて
カトリのいた時間と今が、にじんで溶け合ったらいい。
今日、この部屋で、そういう時を、カトリの気配を、一緒に感じてもらえたら嬉しい。
そんなことを話した。
音は
かたちのないまま
逃れてゆくまま
時や 魂に
よく似ている
その時、その場所で生まれる即興音楽を続けてきた隼人さんが、
昨年発表したソロアルバム「小さな歌」
これまで、日付や時間だけが記されていることが多かった隼人さんの曲に
ひとつひとつ 名前がついている。
音から生まれて、育っていくひとつらなりのメロディーを
とどめておくこともしたくなった。
名前を与え、かたちを与えた音楽を、「歌」と呼びたい。
と隼人さんは言った。
かたちのないもの
逃れてゆくものに
名前をつけるということ
名前をつけて
もういちど
手放すということ
その行為にどんな意味があるのか、わからない。
けれど、その切実さを、私は知っていると思った。
その愛おしさを、私は知っていると思った。
それで、前よりずっと、隼人さんを近くに感じた。
この日の隼人さんの演奏が、どんなだったかは、言葉にしない。
ともに時間を過ごして下さった人たち
それぞれの心の中で、それぞれの響き方をしている、きっと。
隼人さんも、親しい友人たちも、はじめてお会いする人たちも
皆等しく、優しくて懐かしかった。
特別な一日を、本当にありがとうございました。
* * * * *
この日のおやつは、大磯三日月姉妹の美味しいパウンドケーキ。
開演前、特等席を独り占めしてた蕾。終始くつろいで、一緒にギターを聴いていた。
自分で焼いたケーキで、カッちゃんの誕生日を皆でお祝いできたのも、すごく嬉しかった。
ギター少年たち。
終演後 外に出ると、昇る満月がうそみたいに明るくて、まん丸だった。
2018年3月2日
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