ボナミの本
すずちゃんの のうみそ
「すずちゃんの のうみそ」 2016年3月18日(金)発行 1,750円(税込) 297 × 210 mm 全15葉
文・竹山 美奈子 絵・三木 葉苗 題字・三木 咲良 パッケージ・杉山 聡
編集・DTP・竹山 美奈子 発行者・竹山 美奈子
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このかみしばいは、重度の自閉症のすずちゃんの代わりに、ママが
保育園の先生と、お友だちに書いた、卒園前のお礼のお手紙です。
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「どの部分に障害があるのか明確にしたい。
だから、“のうみそ”の絵は、必ず描いてほしいんです。」
すずちゃんのお母さんであり、紙芝居の作者の竹山美奈子さんから、
絵についての具体的な注文は、これだけでした。
しょうがいを 障害として 受けとめる
自閉症の人は、情報伝達を司る脳幹の中枢神経に障害があるといいます。
すずちゃんの横顔に、おもむろに“のうみそ”を描き込むと
私は、その場所を、青く塗りました。
一点の青の存在は、やわらかな振動とグラデーションで、その周囲に、
そしておそらくは、全体に、確かに影響しているのが分かりました。
次に私は、連続性や一貫性を持った情報が、その一点を通り過ぎると、
散り散りなる様を描きました。
それらは、紙吹雪のように、コントロールを失って、風に舞いました。
その中には、悲しみも苦しみも怒りも喜びも、少しも損なわれることなく存在していました。
一点の青は、確かに、すずちゃんや妹の咲良を苦しめています。
けれど、その存在によって、彼女たちが損なわれることは、ひとつもないのだと
私は、あらためて知りました。
一点の青は、わずかな意図も持たず、ただ、静かに静かに故障していました。
私たちは、「障害」をなにかに置き換えたり、ごまかしたりする必要などなく、
それをたずさえて生きる、すずちゃんや咲良と同じように、ただ、そのままを受けいれるしかないのです。
そのままを悲しみ、愛することしか、必要ないのだと思います。
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小さなたのもしい支援者へ
すずちゃんは、今まで保育園で一緒に過ごしたお友だちとお別れして、
この4月、特別支援学校に入学しました。
小さな子供たちが、すずちゃんと自分との違いに素直に首を傾げながら、考えたり、感じたり
ともに成長する様子を、美奈子さんは、本当に嬉しそうに話して下さいました。
この紙芝居は、すずちゃんのお友だちに向けて
優しく語りかけるような言葉で綴られています。
「小さなたのもしい支援者である子どもたちが、
障害や自分の個性について考えるきっかけになれば、
こんなにうれしいことはありません。」
美奈子さんが実感した、お友だちの優しさ、たのもしさ
子供たちに対する、感謝と尊敬が、この紙芝居を通して、すぅーっと胸に届きます。
その誠実で優しい言葉は、子どもだけでなく大人にも、
シンプルに「障害」と向き合うきっかけを与えてくれるはずです。
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紙芝居のじかん
すずちゃんの保育園で、卒園前に紙芝居の朗読会がありました。
それが、この紙芝居のお披露目でした。
その日は、自分が描いた絵を、子供たちがどのように受け止めてくれるか、
朝からずっと心配で仕方ありませんでした。
夜になり、1歳半から6歳までの全園児さん、先生方が、じっと集中して聞いてくれたと、
美奈子さんから報告がありました。
何より驚いたのが、すずちゃん自身がとても静かに聴き入って、
最後の絵を見た瞬間に笑ったそうです。
そしてニコニコしながら、すずちゃん語で、一生懸命何かを言っていたって。
私は、嬉しくて、泣きました。
美奈子さんは言いました。
「紙芝居はひとりで楽しむものではなく、読み手がいて、聞き手がいて
必ずだれかと分ち合うもの。だから、紙芝居にしたかった。」
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紙芝居のパッケージ。素朴なクラフトのボード紙ではさみ、糸でとめました。
題字は三木咲良。パッケージの活版印刷は杉山聡。Bonami皆で関わることができて嬉しい。
気軽にどこでも楽しめる、A4サイズ、15枚の小さな紙芝居。(一般的な紙芝居は、B4サイズ)
文字面には、自閉症の特徴的な行動についての、簡単な説明が入っています。
原画は、子供たちにとって身近な画材、色鉛筆で描きました。
「すずちゃんの のうみそ」について 紙芝居に寄せた、竹山美奈子さんと、三木葉苗の「あとがき」
かみしばい「すずちゃんの のうみそ」は私たちの宝物になりました。
こうして、新しいBonamiの本として紹介させていただけること、本当に幸せです。
すずちゃん、美奈子さん、どうもありがとう。
どうか、多くの人がこの紙芝居と出会って下さいますように。
ながくながく、いろんな場所で、語らいが広がりますように。
2016年4月
Bonami
2016-04-09 | Posted in ボナミの本 | Comments Closed