アトリエの日々
「布にふれるとき」 染織家の吉野綾さんのこと
染織家の吉野綾さんのロゴイラストを描かせていただきました。
綾さんとの出会いは、刈り取った羊の毛から糸を紡ぐワークショップ。
今年の3月、私の誕生日のことでした。
上の写真は綾さんが紡いだ糸。
目を凝らせば、どこも同じ色はないのに、ふんわりと解け合いながら全体の調和を保っている。
光や陰も吸い込みながら、生き続ける天然の糸に感動しました。
染織に携わる前は、絵を描かれていたという綾さん。
綾さんの織る布は、たとえ模様がなくても、風景を見ているようです。
移り変わる色、風、感情の揺らぎ、そのすべてをかすみのように含んで存在しています。
綾さんは長い間、糸を染めることなく羊本来の色だけを組み合わせて美しい布を織っていましたが、
定まりつつあったスタイルやこだわりを脱ぎ捨てて、
いま、もっと自由に、もっと自然に、ご自分の表現をされようとしています。
そんな大切な折に、綾さんからロゴイラストのお話をいただいたのは
私にとって信じられないような、少しおそろしくもあるような光栄。
綾さんがBonamiのアトリエに訪れて、どんなイメージにするか話合いました。
布や糸、織りを表現するモチーフには限界があります。
かといって、そこから離れると、モチーフに限りがなくなる。。
結局、イメージが定まらないまま、その日を終えようとしていました。
去り際、Bonamiの書棚を眺めながら、綾さんが一冊の絵本を手にとりました。
男の子が、マフラーを首にまいた絵が表紙でした。
「私が布を好きなのは、布をまとった時の、この安堵感なのよね。」
思い出したように、綾さんがほっとひとつ息をはいて、こう言いました。
「葉苗さん、もう、ロゴマークだとか思わなくていいです。
葉苗さんが思うまま、絵を描いて下さい。」
この絵をはじめて見たとき、綾さんは祈っているようだと言いました。布を織る作業は、祈りにとても似ていると。
そうして生まれた絵を夫が活版印刷で刷り、タグに仕上げました。
これからは、綾さんの作品にこのタグがつくのだと思うと、胸が躍ります。
麻のストールにつけられたタグ。(この一枚は、綾さんにお借りしました。)
とても居心地がよさそうで嬉しい。
綾さんの作品は、8月13日から滋賀県の gallery mamma mia にて行われる企画展「10年展」に展示されます。
「これからの10年、綾さんが作り続けたいもの」を準備されたそう。
お近くにお住まいの方、ぜひお運び下さい。
私の誕生日に初めて出会った綾さん。
今日、8月10日は綾さんのお誕生日。
この日にイラストが間に合って本当によかった。
おめでとうございます、綾さん!
そして
ありがとうございました!!!
吉野綾さんのFacebookページ 「淘綾(ゆるぎ)にて」